【イェッタイガー】家虎に基づく損害賠償請求権についての10問10答

おはようございます,こんにちは,こんばんは!
毎度おなじみ,温泉ソムリエべんごちの けーぶいえぬ です。

さて,令和2年2月2日,世間は「ツインテールの日」で盛り上がるはずでしたが,朝からこんなツイートで盛り上がってしまう一日になりました。


「家虎根絶」というパワーワードが強すぎるところですが,法学クラスタとしては,そんなパワーワードよりも気になってしまうのは

場合によっては損害賠償請求など法的手段の検討もさせて頂きます。

の部分ですね!

ということで(?),家虎について法的観点から色々検討してみました!

Q1 そもそも「家虎」って何?

A1 世の中には知らなくて良いことがある。純粋な貴方はこのブログを読んではいけない。すぐブラウザバックするんだ!


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          /     / l    ヽ /      |  \
| し な 間 〉 //  l_ , ‐、   ∨ i l  | |    \      は
| ら っ に |/ l ,-、,/レ‐r、ヽ  |   /`K ,-、 <   し
| ん て あ   / | l``i { ヽヽ l | / , '/',` //`|_/       や
| ぞ も わ    |> ヽl´、i '_   。`、llィ'。´ _/ /,) /\    ろ
| |   な   |`/\ヽ'_i ,.,.,.⌒´)_ `_⌒  /__/l  \       く
っ   |    く    |/ / l´,.-― 、l`ー一'_冫 /l l |   /   っ
!!!! |        \ ', /  /`7-、二´、,.| /// |   /
           lT´ {  /  /  ト、 |::| /// /  /    !!!!!
          l´ ヽ、 > ー    ,/ |ニ.ノ-' / / _
              i``` 、/ }    ',,,..'  |-'´,- '´     ̄/ ヽ∧  ____
           \/ ' \_  `´ノ7l´      /    // ヽ l ヽ
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Q2 家虎ほんと嫌い 家虎は何があっても許せない

A2 気持ちはわかる。でも,それと損害賠償できるかは違う話。

ワイ職,Aqoursちゃんだと箱推し前提の曜ちゃん推しなので,「田んぼになりたいAQUARIUM」には色々と思うところがあるというか,なんというか,ライブで恋アクのイントロ流れる度に色々思うところありますよ,ええ。
でも,だからといって「家虎した ⇒ 金払えといえる」ということには当然にはならないんです。
でもカラオケとかアニクラだと\田んぼの様子がおかしい👏イエッタイガー!/してます(←

Q3 お前は家虎嫌いじゃないの?厄介勢の肩を持つのか!?

A3 感情論と法律論を一緒にしない方がいいぞ。

【解説】
法律論の世界は「要件→効果」の世界です。
ある要件を満たした場合に,ある法的効果が発生するんです。
あなたがどういう気持ちになったとしても,その「お気持ち」が法律で要求される要件を満たさなければ法的効果は発生しないんです。

Q4 それじゃどうやったら運営側は家虎厄介に損害賠償させられるんだよ?

A4 そもそも論として,家虎することが債務不履行に当たるか,または不法行為に該当する必要がある。

【解説】
債務不履行というのは,要するに「契約違反」のことですね。
不法行為というのは,他人の権利等を侵害する行為のことです。
したがって,運営側が,家虎したことを理由に損害賠償するには,そもそも論として
①チケット販売契約に家虎を禁じる旨の記載があるのに家虎した場合(=債務不履行)か,または
②家虎が運営の権利等を侵害している場合(=不法行為)
である必要があります。

Q5 債務不履行または不法行為があればすぐに損害賠償できるんだな!?

A5 NO。家虎によって損害が発生したことを運営側が立証する必要がある。

【解説】
損害賠償って,「本当なら100%のところ,お前の行為のせいで70%に減っちゃったから,減った分の30%を賠償しろ」っていう考え方なんです。
なので,債務不履行または不法行為があったとしても,100%のままなら損害ゼロなので損害賠償請求できないし(=損害の不発生),仮に損害があったとしてもそれが債務不履行または不法行為によって発生したと言えなければ損害賠償請求できないのです(=因果関係の否定)。

まとめると,運営が家虎した人間に損害賠償請求するには,

①家虎が債務不履行または不法行為に当たること
②損害が発生したこと
③上記①と②の間に因果関係があること
④上記①について故意・過失があること

が必要です。

Q6 つまり…どういうことだってばよ?

A6 運営が「家虎によって損害が発生した」と立証できるのかが問題なんです。

【解説】
上述したとおり,家虎した人間に対する損害賠償請求をするには,家虎によって損害が発生したことを立証する必要があります。

例えば,「殴ってけがした!治療費払え!」というケースだと,殴るという不法行為によって,治療費分の損害が発生したといえますね?
例えば,「注文した品を寄越さなかった!賠償しろ!」というケースだと,注文した品を用意しなかったという債務不履行によって,ちゃんと注文した品を用意したことによって得られたはずの利益分が損害だといえます。

同じようなことを家虎についても言えないといけないんです。
つまり,「家虎したことで会社にこんだけの金銭ダメージが発生しました!」と言えないと,運営側は損害賠償請求できないということです。

Q7 家虎は営業妨害!だから損害ある!

A7 家虎が営業妨害だと言うためにはいくつか超えないといけないハードルがある。

【解説】
営業妨害が不法行為となるのは,その妨害行為によって実際に業務に支障が出ることが必要です。
つまり,家虎によって具体的に何か運営のライブ業務に支障が発生したといえない限り,家虎が「営業妨害」に当たるとは言えないことになります。

ここで重要なのは,「お気持ちを害した」だけでは妨害にはならないということ。
「お気持ち」と業務の遂行は別問題だからです。
家虎したことがライブ運営の遂行が妨げられた,と言えない限り営業妨害にならないと考えるべきでしょう。

出演者及びスタッフ全員が,某イェッタイガーってやつやめてくんねえかなお兄さんよろしく,家虎した瞬間に演奏・演出全て止めますと事前に宣言していたのにもかかわらず家虎した という場合であれば,まぁ,営業妨害だと言えるかもね……

でも,現状,家虎してライブの進行が止まるといった事例は無く,家虎が営業妨害に当たるとは言えないでしょう。家虎を営業妨害にするためには,ライブの在り方をガラッと変える必要があると思われます。

Q8 家虎を債務不履行にするにも約款を変えないといけないってこと?

A8 YES。ただ,どうやって変えるかは丁寧な検討が必要。

【解説】
約款の文言は,疑義が入らないような文言にする必要があります。
例えば,「不快なことをすることを禁じる。」という文言は,解釈の余地が広すぎるダメな文言です。
ということで,何をしたら家虎になるのかを明文化しないといけないんですが,家虎を明文化するとは……?すぐには検討つきませんね┐(´∀`)┌ヤレヤレ

Q9 ごちゃごちゃうるせぇ!どうにかして金払わせる方法教えろ!!

A9 約款で違約金を設定しておくという方法がある。が,違約金は不相当に高いと無効になるおそれがあるのでやはり文言は丁寧に検討する必要がある。

【解説】
契約に違反した場合に,一定額の金銭を支払うことをあらかじめ約束して契約することができます。この「約束により支払われる金銭」のことを違約金と言います。
そして,違約金が設定されている場合,契約違反(=債務不履行)があったことを立証すれば,損害が発生したことを立証しなくても,当初定められた違約金を支払うよう求めることができます。

つまり,例えば,約款に「家虎したら○○○○円支払う。」という文言が入っている場合,その人間が家虎したことを立証さえできれば,実際に運営側に損害が発生したか否かに関係なく,○○○○円を支払えと言えるんです!

画期的だと思うでしょ?

でも,2つ問題がある。
1つ目は,Q8と同様,「何をしたら家虎したことになるか」を具体的に規定しないといけないということ。
そして2つ目は,違約金としてどれくらいの金額を設定するかということ。

違約金は,特段の事情がない限り「損害賠償の予定」と推定されます(民法420条3項)。
つまり,違約金は,罰する目的ではなく,損害賠償と同じ扱いとなるので,普通に損害賠償請求したら請求できたであろう金額の範囲内で違約金を設定しないとなりません。

ワイ職の所感ですが,チケット代金の1~3倍程度の範囲内にとどまるのではないでしょうか。
その範囲を超える場合,違約金条項は(お互い納得したとしても)無効となってしまいます。

要するに,約款の文言は丁寧に考えないといけませんね,ということになります。

※「違約金の額を超える損害が発生したときは、その超過額を請求することができる」等と規定することで推定を覆す,という考えもありますが,その場合は改めて「何が損害なりや」という前述の問題点が浮き上がってしまいます。

Q10 運営が損害賠償請求するに当たって他に何が問題ある?

A10 家虎した輩を特定し,その住所と氏名を特定しないとならない。これにチケット転売問題が絡むとより複雑になる。

【解説】
損害賠償請求する場合,絶対に必要なのが相手の住所と氏名。
住所と氏名が分からないままだと内容証明が送れませんし,訴訟も提起できません。
なので,家虎した人間が分かったとしても,その住所と氏名が分からないと,具体的な請求はできません。

……え?裏に連行して金払うまで家に帰さなきゃいい?
それはリーガル的には極めてリスキーですねぇ……

で,住所氏名をどう特定するかというと,おそらく座席から特定するんでしょうけど,そこで問題となるのは「転売でチケットを取得していた場合」です。

AさんがBさん名義のチケットで入場し,家虎した場合を想定します。
その場合,運営は「Bさんが家虎した」と認定して,ライブに参加していないBさんに損害賠償請求をすることになりますが,Bさんとしてはとばっちりですし,運営側のレピュテーションリスクにもなり得ます。

おそらく,運営側は約款を改定するんだろうと思いますが,この辺りのデューデリもしっかりしないと新たな問題が噴出するでしょうね。

まとめ:約款は改訂するだろうし,出禁はやるだろう。損害賠償までやるには課題が多い。

とまぁ,勢いに任せてこんなブログ書いてたところで,こんなツイートが出てきた。



法務と打ち合わせしないままあのツイートしてたんかい!www

法務だけで終わらすのか,はたまた顧問事務所と相談するのか,分からないですけど,法学クラスタとしては今後の運営側の動向に注目したいですね!

個人的には,TPOの問題だけだと思うんだけどなぁ……

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