ヤン・ヨンソンに残された時間

ヤン将に残された時間はあと数日かもしれないという話

清水エスパルスの'19ルヴァン杯が終わりました。

いや,あともう1節あるのは分かってるけど,GL敗退が確定した時点で終わりと言ったら終わりなんです。
ついでにリーグ戦も16位と低迷,赤いチームに2連敗喫してしまいました。これ以上敗戦を重ねてしまうとそろそろヤバイっていうところで,次節はここ数年勝てる気すら起きないほど太刀打ちできない川崎F戦。我らがヤン将の首元にはギロチンが添えられているも同然の状況となっています。

徐々に良くなってはいるんですけどね。浦和戦は失点するまでは良かったんですよ。
鹿島戦は……うん。
戦力を大幅に増強させた状態でこの結果なので,ヤン将及びGMらに対するヘイトがネット上で噴火しつつあります。
そんな我らがヤン将のここまでを一度振り返ってみたいと思います。

小林伸二が巻いた種と舞い降りたヤン・ヨンソン

J2降格を経験し,長い苦しみの中,最後の「怒涛の9連勝」で1年でのJ1復帰を遂げた我がエスパルス。

'15年は,大榎政権が選手の「やりたいこと(=インスピレーション)」で何とかする無秩序チームを作り上げてくれたおかげで組織が破綻し,田坂政権下でも組織を全く修正できず,愛するチームはJ3ですら戦えないんじゃねーかっていうチームに成り果てました。

そんな「どん底」と呼ぶにふさわしい状態からチームを救ったのは小林伸二。彼は,4-4-2の導入と守備バランスの再調整を施し,戦えるチームに仕立て上げ,1年でのJ1復帰という大ミッションを成功させた。また,それだけでなく,犬飼智也・白崎凌兵・松原后・金子翔太・北川航也といった若手たちを1年で育て上げた。

そんな救世主のようなコバさんだったが,J1復帰初年度の'17は苦しみに苦しんだ。
「10番」の流出により,攻撃パターンが定まらなくなった。それだけでなく,チアゴ・アウベスという「シュートで客が呼べる」ワンマンアーミーと呼ぶにふさわしい戦力を獲得しながらも,連携を上手く取れず,攻撃は単発なものに終始した。
守備も4-4ブロックは組むものの,ゾーンなのかマンツーマンなのか中途半端で(J2時代も特に良いわけではなかったけど通用して(しまって)いた),J1の攻撃陣に耐えられるレベルではなかった。
そして,怪我人が相次ぎ,選手層の薄さが露呈。二種登録選手をフル活用しないと回らない状況に陥った。
そんな厳しい中でも,今ではチームの大黒柱になった后君・翔太・こーやをJ1レベルに仕立てることに成功したものの,「育成と成績」が両方とも求められたシーズンを戦い切ることができず,何とか残留という結果を出してチームを去ることになってしまった(2-0から3点取られてひっくり返されたホーム最終節・新潟戦後のセレモニー時のコバさんへのブーイングは聞いてて辛かった……まぁ結果を見ても仕方ないことだけども)。


そんな清水エスパルスに広島からやってきたのが,ヤン・ヨンソン。
コバさんが組み立てた4-4-2にポジショナルプレーを組み込み,W杯中断期間前は苦戦したものの,最終的にはゾーンDFと前線プレッシング+後方リトリートの組み合わせで守りつつショートカウンターで得点を量産するチームを作り上げ,'18シーズンはチームとして久々となる1桁順位フィニッシュという成果を成し遂げた。
成果を出しつつ,若手の育成についても成果を上げた。こーやを代表に選出されるまでに育てたこと,翔太をSMFにコンバートしてハーフスペースの鬼に仕立て上げたこと,立田悠悟をJ1レベルのDFに成長させたこと。これは,'19シーズンの飛躍に必ずやつながる明るい未来であると思えました。


そして迎えた'19シーズン。
シラの流出とMデューク・フレイレの契約満了は痛いなと思われながらも,獲得した新戦力が近年稀にみる期待値の高さで,これに現有戦力が組み合わされば必ずや亡久米GMが遺した「5位以内」という目標は達成できる!清水のサポーターは皆そう信じていました。
ところが……

ヤン将の誤算(?)

1.守備の誤算その1-止まらないサイドからの失点-

伝統的にサイドアタックを標榜してきた清水エスパルスがここまでサイドアタックに弱い理由は何なんですか!?!?!?!?

浦和戦の1失点目のCK。
鹿島戦の1失点目と2失点目。
ついでにルヴァンのアウェイG大阪戦の弦太にやられたCK。
ここ数試合必ずサイドから点を取られているんですよね。

特に鹿島戦の1,2失点目がエスパルスの「守備の綻び」を端的に表しています。


1失点目(1'12''~)も2失点目(1'52''~)も,「DFラインとボランチの間に入られて失点する」を繰り返しています。

いや,わかるの,わかるんだよ?ゾーン埋めてるんだよね?エリアを埋めてるんだよね,わかるよ?うんわかる。だって上から見ればキレイなブロック組めてるんだもん。
でもさぁ,なんでみんなボールばかり見てるの!?!?!?馬鹿なの!?!?!?首振らないの!?!?!?!?

1失点目は土居が急減速したことでヘナトのポジショニングがズレてしまい,結果,土居にこぼれ球をフリーで打たせてしまいました。でも,ここでヘナトは減速したあと土居を見失っているんですよね。見失った状態でクロスが入ってしまい,後手を踏んだ結果土居に決められてしまう。ヘナトがそこで首を振っていれば,ポジショニングを修正できたように思うんですよね。

2失点目は,レアンドロにパスが入って后くんと1vs1になったとき,河井君は首振って安部裕葵が中央に走っているのを見てるんですよ(2'22'')。で,後ろに飯田君がいるのも見えてるから,おそらく河井君の中では飯田君が安部裕葵の対応をするもんだと判断してしまったんだと思うんです。だからか,レアンドロに后君がぶっちぎられて中にグラウンダー通されるまでの3秒間,一切首振ってないんです。それで,後ろからドフリーで走りこんでくる安部裕葵に気づけずズドン。もう1回首振ってれば安部裕葵に対してアプローチをかけられたはず……
なお,飯田君が安部裕葵をケアできなかった理由ですが,飯田君は首振った結果大外から走ってくる安西が気になってしまい,そっちのケアに行ってしまったんですよね。なんでゴールに近い方ではなくゴールに遠い方をケアするのか僕にはよくわかりません……

2.守備の誤算その2ー弱点と化した両SBー

'18のエスパルスは,右SBに本職はCBのゆーご君を置いていました。ゆーご君は攻撃面ではパルプンテのような存在でしたが(たまにありえん素晴らしいオーバーラップ決めたり,イチを彷彿とさせるアーリークロスをたまに入れたりしたあたりマジパルプンテ),逆に守備では持ち前の対人守備を生かしてボールを跳ね返していました。そのため,チームとしても左サイドからの守備にリソースを避けることができ,后君の守備力の低さをチームでカバーできてました。左SMFに配置されたシラも,よくバランスを取れていましたしね(最終ラインまで鬼のプレスバックをしたあと鬼のようにポジトラできるシラが抜けたのがマジで今になって痛いわ……)。

'19になると,①ゆーごのCB化と②シラの流出による左サイドのバランスの悪化により,エスパルスは両サイドは一気に「薄く」なりました。
その結果,ここ数試合は両SBの裏を狙われることが増えました。連勝できましたが,磐田戦もC大阪戦もSBの裏は狙われ続けていましたし(磐田は后君を,C大阪はエウソンを狙ってました)。

正直,ヤン将にとって誤算だったのはエウソンの守備力の低さなんじゃないかと思うんですよね。リトリート時のポジショニングが良くないし,1vs1になったときも基本的にボール奪れないし,翔太と連携が取れないし。
海豚サポからは「エウソンの使い方はそういうんじゃないから!」と怒られそうですが,最終ラインはリトリートが前提で,かつ連動したゾーンディフェンスが要求される清水では,ポジショニングが悪いのは致命的。別にポジショニングが悪くても対人守備で質的優位を保てればいいんですがそれもダメっぽい。そうなると,清水にとってはなかなか厳しいものがあるんですよねぇ。

じゃあエウソンの代わりがいるのかというと,飯田君も守備に不安があるし,翔雅君はこの前のルヴァン見るにまだ不安がある,ということで,やっぱエウソンしかいないな!ってなる。
え,ゆーごを再度右に置くかって!?それはダメ。彼をU-23に最後まで送り続けるにはCBで起用し続けるしかない。

3.攻撃の誤算ードウグラスと航也ー

去年「清水史上最高の助っ人」と言わざるを得ない最高クラスの働きを魅せたドウグラス。しかし,今年は,不整脈の影響で合流が出遅れ,かつ,パフォーマンスもなかなか本調子に戻らないという苦しい状況。
「困ったときに何とかしてくれる存在」というのはチームに安定と安寧をもたらすので,ドウグラスがフィットした去年後半戦は全体的に落ち着きがありました。今は,ドウグラスがいない/不調なため,チームに動揺が見られます。困ったときに前に出してもカットされてまた守備に追われるかもしれない,そういう意識をチームに植えてしまっています。

輪をかけるように,こーやの「偽9番化」が逆にチームを悪い方向に追いやっているように思います。これポイチのせいでもあるだろjk。
去年までは,こーやは基本的に1列目にいて常にゴールを狙う位置にいました。ドウグラスが加入してからは,ドウグラスの衛星のように,常にドウグラスからボールを呼び込める位置にいました。前で張っているからこそ,相手DFにとって嫌な選手になれていました。
今年は,こーやが「偽9番」として中盤に降りてきてパス回しに参加し,2列目の翔太・慶太に前を向かせて突破を図らせるようになりました。でも,こーやが前に張らなくなったので,相手DFはテセorドウグラスだけに集中すればよくなりました。その結果,「困ったときの放り込み」ができなくなり,相手にボールを奪われサンドバッグ状態が続く悪循環。そりゃいくらテセでもDF2人を相手にしつつちゃんとポストプレーするなんて無茶ですよ。

4.全体的な誤算ー勝ち癖できたはずだったんだが?ー

エスパルスに勝利の味を思い出させてくれた小林伸二。
エスパルスに負けていても逆転できるという自信を思い出させてくれ,上位進出の旨さを教えてくれたヤン・ヨンソン。
この3年間で,エスパルスは大榎克己によって完膚なきまでに失われた「勝ち癖」「自信」を回復した,はずでした。

ところがどっこい。

失点してからの慌てぶりがマジでひどい。
失点したあとのがっかりっぷりがマジでひどい。
リーグトップクラスの攻撃力があるウチなら,2点取られても3点取ればいい,それだけの力が俺達にはある。そう思わせてくれた'18後半戦のオレンジ戦士たちはどこへ行ったんだ!?

あまり精神論は言いたくはないんですが,サッカーというスポーツにおいてメンタルは極めて重要な要素となっていて,いくら戦術を教えようが,メンタルがダメなら何も機能しません。
ヤン将もまさかたった数か月で去年得た「自信」を亡くしてしまうとは思わなかったんじゃないかな。

まだ別れは言いたくない,言いたくないが……

こんな感じで,去年の上積みができる!3バックというオプションも得られる!という青写真は崩壊し,残留争い必至の状況に堕してしまいました。
正直,浦和・鹿島・川崎Fの連戦が厳しいものになるだろうことは日程が決まってからわかりきっていたことだった,だからこそ,そこに行くまでにある程度勝ち点を稼ぎたかった。でもできなかった。特に湘南に酷くやられたのは痛かった……

時期的に見ても,おそらく川崎F戦に負ければヤン将の首は飛ぶでしょう。
冷静に考えれば,後任は篠田の昇格だろうと思う,そのために篠田をコーチに据えてたんだろうから。でもウチのGMは現代サッカーの潮流が分かっているのか怪しい大榎克己だからなぁ…またぞろポジショナルプレーが分かってないタイプを連れてきそう…?

去年もW杯中断前はあまり良くはなかった。一時降格圏にも落ちた。
だから,ヤン将はここからまたチームの調子を上げられる,そう信じてはいる。いるんだけど,今年のチーム目標からして,川崎Fに負けたら,チームは彼にそれ以降の時間まで与えてはくれないだろう。

でも,それでも願うんだ。
まだ清水にはヤン・ヨンソンが必要だ,だから,頼む!と。

まだ彼と別れたくはない。

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