おはようございます,こんにちは,こんばんは!
温泉も銭湯も大好きでお馴染み(?),温泉ソムリエべんごちの けーぶいえぬ です♪
温泉も銭湯も大好きでお馴染み(?),温泉ソムリエべんごちの けーぶいえぬ です♪
先日,当職のTwitter垢にフォロワーさんからあるご質問を頂戴しました;
こんばんわ。両方ともに読んでみたんですけど、難しい言い回しをしているものが多くて、よく理解できなかったんです。公衆浴場法による銭湯の定義と、物価統制令は何で銭湯に関連しているのかが知りたいです。
— ちあき@お酒と強酸性硫黄泉とラムダLOVE!!♨️ (@aposteriori) September 18, 2020
なるほど,確かにこの辺りの法令はあまり馴染みがないものですし,物価統制令も全面カタカナで読みにくくて分かりにくいですよね(;´・ω・)
ということで(?),今回のブログテーマは「銭湯に纏わる法令」と題して公衆浴場とその入浴にかかる値段について解説してみます!
1.公衆浴場法は公衆衛生を維持するための法律
(※公衆浴場法の条文はコチラ)
公衆浴場,という言葉をそのまま読めば,皆さまのご自宅のお風呂や,宿泊者しか入れない温泉宿の大浴場とは異なり,不特定多数の人々が利用する入浴施設のことを指すものと理解できます。
さて,自宅のお風呂や旅館の大浴場とは異なり,"不特定多数"の入浴客が入れ替わり立ち代わりにお風呂に入るような場所だと,何か心配になることはありませんか?
そう,衛生環境,ですよね?
公衆浴場は広い意味で「水回り」ですから,自宅の水回りと同様,菌が繁殖しやすい環境です。浴槽内のお湯は特に菌が繁殖しやすく(レジオネラ属菌がいい例ですね),何も対処しなければ不特定多数の入浴客が伝染病に感染しクラスター化してしまいますから,定期的にお湯を張り替えたり,塩素消毒等しないといけません。
ですが,それを公衆浴場の事業者の自助努力に任せてしまうと,やる事業者とやらない事業者で差が出てしまい,公衆衛生を守れません。
そこで,強制力をもって公衆浴場の衛生環境の維持を義務付ける法律が必要です。
それこそが「公衆浴場法」なのです。
まず,公衆浴場法は,「公衆浴場」を「温湯,潮湯又は温泉その他を使用して,公衆を入浴させる施設」と定義し(法1条1項),業として公衆浴場を経営しようとする者(「営業者(法2条の2第1項)」)は都道府県知事の許可を得ない限り営業できないと規定しました(法1条2項,2条)。
そして,法は,営業者に対し,入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じる義務(法3条,5条2項)を負わせるとともに,入浴者にも浴槽内を著しく不潔にする等の公衆衛生に害を及ぼすおそれのある行為(ex;浴槽内で身体を洗う)をしないよう義務付けました(法5条1項)。
さらに,上記の義務がしっかり履行されるように,刑罰規定を設けるとともに(法7条~11条),都道府県が立入検査等をすることができるようになっています(法6条)
なお,具体的な許可基準や営業者が講じなければならない具体的な措置については,各地の事情にも配慮する必要があることから,各都道府県が条例で定めて良いとされました(法2条3項,3条2項)
こうして,公衆浴場法により,不特定多数の人間がお風呂に入っても衛生環境が害されないような手当てが施されているのです。
ところで,たまに「公衆浴場法により浴室内に石鹸・シャンプーは設置しておりません」とする公衆浴場を見たりしますが,公衆浴場法にも,その細則を定める公衆衛生法施行規則にも,浴室内の石鹸・シャンプーの設置について何ら記載していません(逆に「必ず置かなければならない」とも書いてません)。
公衆浴場法は,営業者がどのような措置を講じなければならないかについては,地方毎の事情もあるため,条例に任せています(法3条2項)。そのため,もしかしたら地方によっては条例で「石鹸・シャンプーを設置してはならない」と定めている場所もあるかもしれませんが,いずれにしてもそれは条例マターの問題であって,公衆浴場法そのものとは関係ありません。
ちなみに,温泉宿やホテルなどの大浴場についても,公衆浴場同様,衛生面の問題がつきまといますが,そちらは旅館業法により同種の手当てがなされています(同法4条)。
……ちなみにちなみに,ですが……………"入谷の北東の方のエリア"とか"川崎駅から少し東にいった辺りのエリア"とか"札幌の中島公園の北の方のエリア"などで良く見られる,不特定多数が入浴()する個室付き浴場も,公衆浴場法の適用を受けます………男子なら一般常識ですかね……………
2.公衆浴場の入浴料は誰が決めるの?
(※物価統制令の条文はコチラ)
(※物価統制令施行令の条文はコチラ)
(※公衆浴場入浴料金の統制額の指定等に関する省令はコチラ)
さて,続いて物価統制令周りについてです。
物価統制令は,「終戦後の事態に対処し物価の安定を確保し,もって社会経済秩序を維持し,国民生活の安定を図るを目的とす」るものです(同令1条。書き下し及び句読点は筆者。)。
戦争が終わった後というのは概してインフレが起こりやすく,物価がアホみたいに上がりやすいので,これを統制しないと国民が生活必需品を何も買えなくなってしまいます。そこで,必需品については価格を統制することで物価の上昇を抑えよう,という目的で定められたのが物価統制令です。
※ちなみに,物価統制令は厳密には法律ではなく,ポツダム宣言受諾に伴い帝国憲法に基づき天皇が発した勅令ですが,現憲法下においても法律としての効力を有するものとされています(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く経済安定本部関係諸命令の措置に関する法律4条)。
公衆浴場は,家にお風呂が無い人々にとって,身体を清潔に保ち健康を維持するために必要不可欠な場所です。
そのため,公衆浴場の値段を統制しないと,入浴料がアホみたいに高騰してしまい,誰もお風呂に入れなくなり,結果国民の健康だけでなく衛生状態まで害されてしまいます。
そこで,公衆浴場の入浴料については,市場原理に任せず,しっかり統制しないといけないことになるのです。
ただし,物価統制令は,ある物品・サービスについては○○円とする,という形で価格を統制してはおらず,「物価が著しく昂騰し,又は昂騰するおそれある場合において(中略)政令の定むるところにより当該価格等につきその統制額を指定する(同令4条)」と,具体的な統制価格については政令に委任しています。
物価統制令だけを読んでいては何をいくらに統制するのか分からない,ということです。
物価統制令4条(+同令8条の2但書)により「kwskはお前に任せた( `・∀・´)ノヨロシク」された政令を,物価統制令施行令といいますが,この施行令も具体的な物品・サービスについて何ら規定はしておらず,むしろ「主務大臣は統制価格を設けるべきジャンルだけ決めるので,具体的な金額は都道府県知事が決めてねー( `・∀・´)ノヨロシク」とだけ規定して,省令に再委任してしまっています(同施行令11条1項2号)。
物価統制令→物価統制令施行令 と順繰りに( `・∀・´)ノヨロシクされて監督官庁である厚労省が定めた省令が「公衆浴場入浴料金の統制額の指定等に関する省令」です。
やっと公衆浴場の言葉が出てきましたね(汗)
同省令は,全3条の短い省令ですが,3条は従前の省令を廃止するとしか書いてないので,実質たった2条しかない省令です。。
まず1条で公衆浴場入浴料金を定義した上で,その年齢区分を決めます(①12才以上の入浴料金②6以上~12才未満の入浴料金③6才未満の入浴料金)。
続いて2条で「都道府県知事は,(中略)公衆浴場入浴料金につき,その統制額を指定するものとする(同条本文)」と規定します。
………ん?
…………都道府県知事が統制額決めるんですか………?
…………………もうおわかりですね………?
ま~~~~~~た( `・∀・´)ノヨロシク事案ですわ💢💢💢💢💢💢💢
ま,まぁ,各地の物価はその地方毎に異なりますから,た,多少はね……?
さて,上記の流れをまとめると;
物価統制令「物価を統制します!でも詳しい内容は政令に任せます!( `・∀・´)ノヨロシク」↓物価統制令施行令「物価統制令から任されたので詳しい内容規定します!でも主務大臣が『都道府県知事に任せた方が良い』と思う内容もあるかと思うのでその辺は主務大臣が定める省令に任せます!( `・∀・´)ノヨロシク」↓公衆浴場入浴料金の統制額の指定等に関する省令「主務大臣的にゎ~,公衆浴場入浴料金ゎ都道府県知事が決めるとぃぃと思ぅ的な?ぁとは都道府県知事( `・∀・´)ノヨロシク」↓各都道府県「ウッス」
ということになります(;´・ω・)
3.なぜ銭湯の値段は安いのか?(タイトル回収)
ここまで見てきたとおり,物価統制令及びそこから委任された各政令・省令により,公衆浴場の入浴料金は都道府県が自らの判断で決めるべし,とされました。
そのため,各都道府県では,ネーミングの差こそありますが,だいたい「公衆浴場入浴料金の統制額の指定」という名前の告示を発しています。
例えば,東京都は「公衆浴場入浴料金の指定」と題する告示により12才以上は470円と定め,他方で大阪府は「物価統制令施行令等に基づく公衆浴場入浴料金の統制額の指定」と題する告示により12才以上は450円と定めています。
この金額は各地方の物価水準に応じていると考えて良いでしょう。
銭湯の入浴料金が地方によって異なるのは,こうした理由があるからなんですね~。
…………勘の良い方は,気づかれたかと思います………
(。´・ω・)「あれ?公衆浴場法では公衆浴場とは『温湯,潮湯又は温泉その他を使用して,公衆を入浴させる施設』と定義されていたよね?ってことは,スーパー銭湯とかも『公衆浴場』に該当するハズだけど,どこも銭湯より入浴料金高いよね!?!?!?」
…………
…………………
……………………………君のような勘の良いガキは好きだよ♡(笑)
上述したとおり,公衆浴場法は,不特定多数の公衆が入浴する施設を「公衆浴場」と定義しているので,スーパー銭湯や大規模スパ施設,大江戸温泉物語のような温泉施設も「公衆浴場」に含まれます。
それなら,そのようなスーパー銭湯等の入浴料金も統制額の指定に従うべきでは?と思うのも無理ないことです。(個室付き浴場も統制に従え(←))
では,何故両者に違いが出るのでしょうか?
各都道府県が定める「公衆浴場入浴料金の統制額の指定」の告示は,文言の違いこそあれ,どれも2つの要素で構成されています。
1.省令に基づく年齢区分に応じた入浴料金の金額2.この告示は「地域住民の日常生活において保健衛生上必要な施設として利用される」公衆浴場について適用されること
上述したとおり,公衆浴場法は,具体的な許可基準や営業者が講じなければならない具体的な措置については各都道府県の条例で定めると規定しました。
そこで,各都道府県はそれぞれ(名前の差はありますが)「公衆浴場法施行条例」を制定しているのですが,各条例では「公衆浴場」をさらに2つの類型に分解して規定しています。
1つ目は,地域住民の日常生活において保健衛生上必要な施設として利用されるタイプの公衆浴場で,銭湯や温泉地の共同浴場がこれに該当します。このような公衆浴場を「普通公衆浴場」と言ったりします。
2つ目は,それ以外のタイプの公衆浴場(「その他の公衆浴場」と定義する条例が多いです)で,スーパー銭湯や健康ランド等はこちらに該当します。あと個室付き浴場()も
つまり,各都道府県は,まず条例で公衆浴場法により定義された「公衆浴場」を普通公衆浴場とその他の公衆浴場に細分化して定義した上で,「公衆浴場入浴料金の統制額の指定」の告示を普通公衆浴場についてのみ適用する,と規定することで,銭湯・共同浴場についてのみ物価統制していることになるのです。
4.まとめ
長くなりましたので,まとめとして,この記事のポイントをまとめてみましょう;
1.「公衆浴場」の定義は公衆浴場法に書いてあるけど,公衆浴場法による委任を受けた各条例により,「公衆浴場」は①普通公衆浴場と②その他の公衆浴場に細分化して規定されている2.物価統制令→施行令→省令により,「公衆浴場」の価格については各都道府県が適宜決めて良いとされている3.各都道府県は,物価統制令→施行令→省令に基づいて,①普通公衆浴場についてのみ価格統制している4.そのため,②その他の公衆浴場の価格については各事業者に委ねられているだから個室付き浴場()はあんなに高いのかよチクショー!
①普通公衆浴場についてだけ統制しているのは,そこだけちゃんと価格を統制しておけば,お風呂がなかったりして入浴できない人がちゃんとお風呂に入れて,健康及び公衆衛生が維持・確保できるからです。
②その他の公衆浴場まで価格統制しなくても,①普通公衆浴場さえちゃんと守れれば,公衆衛生は維持できる,そういうことです。
なお,注意していただきたいのは,各都道府県が告示により定める統制額は,入浴料金の上限であるということです。物価統制令はインフレ防止が目的なので,上限さえ決めればその目的が達成できるからです。
したがって,統制額より低い金額を定めても何も問題はなく,何なら無料でもOKです(いくつかの温泉地では,入浴料金がかからない公衆浴場がありますが,それはこれが理由です)。
いかがでしたか?
なぜ銭湯の値段が安いのか,おわかりいただけたことと思います。
というか,皆さん,お風呂に入りたくなってきたりしませんか!?!?
これ書きながら当職は銭湯に入りたくなってきましたよ!!!!!
また読者の皆様からのご要望に応じて記事を書けたら楽しいと思いますので,是非皆様ご要望お待ちしています(笑)
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