清水は『サッカー王国』である。
これは未だに歴然たる事実である。
ただ,昔と今とでは『サッカー王国』の持つ意味合いが変わっていると言わざるを得ない。
二度目のJ2を前に,今一度振り返っておこう。
そして,改めて我々清水エスパルスのサポーターが抱くべき【矜持】を確認しよう。
以下長文が続くが「そんなの読んでられん!」という方のために3行でまとめると;
①「実力としての」サッカー王国であることは諦メロン🍈②「清水のサッカー」なんてモン追いかけるの諦メロン🍈③ 今年は内容と結果の両方を追い求めるのは止めて,結果だけに注力しよう
ということである。
1.「実力」と「文化」が伴っていたサッカー王国・清水
……当初は「改めて清水のサッカー史をまとめ直して,いかに清水が『サッカー王国』と呼ばれるようになったのか整理してまとめようウッホホ~イ!!」とイキり立っていたんだけど,まとめ切る前にエスパルス公式がまとめてくれました(白目)
詳細は上記動画に委ねて,要点だけを簡潔にまとめると,静岡県*1が『サッカー王国』と呼ばれるようになったのは
【80年代に小学校から実業団まで全てのカテゴリーで優秀な成績を収めたから】
に外ならない。
実際,この頃の静岡県勢は強かった。
清水からは清水東・清商(現:清水桜が丘)・東海第一(現:東海大翔洋)が全国に行ったが,静岡学園や藤枝東など清水市外にも強豪校が多数あり,当時高校生だった今のアラフィフ・アラカンのオッサン諸先輩方は一様に「あの頃は全国大会より県大会の方がキツかった」と回顧するほどだ*2。
そして,実力だけでなく,清水のサッカーを取り巻く環境も他の県に比べて整っていた。
動画内で言及される指導体制の面だけじゃない,地域全体のサッカーへの理解度の高さは,もはや清水のサッカー文化が他の県を圧倒していることの証左である。
80年代当時,静岡は,そして清水は,実力的にも,文化的にも,まさに『サッカー王国』だったのだ。
2.「文化としての」サッカー王国
それから今年で40年弱が経った。
小嶺さんをはじめとして,80年代当時も優秀な指導者は静岡県外にもたくさんいたが,Jリーグの創設以降,全国的に指導者のレベルはそれまでと比べて遙かに向上した。
よく「代表選手に静岡出身がいなくなった」と言われるが,全国的に指導レベルが上がれば当然の帰結だ。
また,中学・高校レベルでも,部活サッカーはJクラブのユースとの間で優秀な子を取り合うようになった。
しかも昔は少なかった「サッカー留学」なんて,もはや何も珍しいことではなくなった
かつて名波浩が藤枝東ではなく清商を選んだ際は藤枝市内で大変物議を醸したと伝え聞くが,名波が今の時代に中学三年生だったなら,そもそも静岡県内の高校を進学先として選んでいただろうか。
他方で,強いチーム・高校がある県が「サッカー王国」と呼ばれることも無い。
マリノスとフロンターレがいるから神奈川県は「サッカー王国」と見られているだろうか?否である。
今プレミアリーグにいる青森山田が,東福岡が,前橋育英が流経大柏が強いからとて,青森県・福岡県・群馬県・千葉県は「サッカー王国」だろうか?否である。
もはや「○○県が強い」という時代ではない。
清水を含め,全国的に「実力としての」サッカー王国だと呼べるような場所は無くなった。
清水に残っているのは「文化としての」サッカー王国のみだ。
老若男女サッカーが"分かる"のは清水だけだ,という矜持だ。
これだけは,どの県にも未だ負けていないと思う。
3.「清水のサッカー」という幻影
だがしかし,である。
「文化としての」サッカー王国ではあっても,もはや清水は「実力としての」サッカー王国ではなくなっている。
にもかかわらず,清水のサッカー人は,「実力としての」サッカー王国だった時代に未だに囚われている。
「清水のサッカー」という名の亡霊に未だに囚われ続けている。
エスパルスの表現するサッカーが「清水のサッカー」ではないことに憤慨するファン・サポーターは未だ少なくない*3。
清水のサッカー人が未だに囚われている「清水のサッカー」とは何か?
簡単に言えば「強い個が集まって,他を圧倒するサッカー」だ。
サッカー王国の名をほしいままにしていた,80年代のサッカーだ。
サッカーが巧いヤツが11人揃った,才能に溢れたサッカーだ。
スーパースターが11人揃えば強い,というサッカーだ。
決まりごとが少なく,創造性で敵を圧倒するサッカーだ。
裏を返せば「才能頼みで,連携頼み」のサッカーだ*4。
エスパで言えば,'15年の大榎政権時のサッカーだ。
あるいは,'22年前半の平岡政権時のサッカーだ。
今思い返しても,悪夢だ。
このサッカーが上手くいったのは,近年だと'22年W杯の森保ジャパンくらいだろう。
ポイチがドイツ・スペイン相手にジャイアントキリングをやってのけたように,このサッカーは今でも通用し得る。
だが,代表クラスの選手11人がいないと何ともならんし,コスタリカ戦のようにダメなときは徹底してダメ。
クロアチア戦のように,あるいはロシアW杯の時のベルギー戦のように,試合の展開が想定していたゲームプランから外れた後の修正が「選手の閃き・話し合い・アドリブ力」任せだからダメ。
ハッキリ言って,「清水のサッカー」など時代遅れ甚だしい。
少なくとも「1年でのJ1復帰」を目指す我々が目指すものでは決してない。
その幻想は2016年に捨ててきたハズだった。
でもまだ持ってしまっていたんだ。
捨てよう。
幻影を。
今度こそ。
4.内容は結果の後に気づいたらついてきている
今年の新体制発表会でエスパルスから発表された
「清水エスパルスプレーイングフィロソフィー」
と
「清水エスパルスフットボールスタイル」
を覚えているだろうか。
(画像引用元:https://youtu.be/EAX0Ah1m5Hg)
実に 当たり前 のことを言っているだけですよね。
ユニットで戦わないチームはプロリーグに存在しない。
攻守にハードワークしないチームはなく。
全ての瞬間を積極的かつ知性的にプレーしないチームもない。
自分たちの"意図"でボールを動かしたりプレスを掛け続けたりしないチームなんてこの世にいないだろう。
いや,ちょっと待ってくれ。
逆に考えよう。
この一年,まずはこの「当たり前」ができれば内容面としてはOKということにしてしまおうじゃないか。
この一年でJ1でも通用するサッカーを築くゥ!?!?!?!?!?
そんな意識は捨てよう。
それこそ捨てるべき幻想だ。
さっき捨てたはずの,しょうもない幻想だ。
J2という「五大リーグを超える,世界最高峰の泥沼」を一年で抜けるという大義の前では,路傍の石のような幻想だ。
我々サポーターも腹を括らなければならない。
内容より結果だ。
内容より勝ち点80だ。
前回J2を戦った2016年以降,自動昇格枠に必要な勝ち点の目安は80点。
年間42試合のうち,24勝程度は必要な計算だ。
勝率約6割の壁
この壁を超えるという「結果」が何よりも大事だ。
内容なんて,結果の後からついてくる。
内容なんて,J1に戻ってからでもいくらでも作れるし,創れる。
まず俺たちがいるべき場所に戻ろう。
「文化としての」サッカー王国にふさわしい場所へ戻ろう。
どんなサッカーでも良い。
勝とう。
勝たせよう,俺たちの声で。
7年前はできたんだ。
今回だって,できるさ。
まずは水戸戦。
しっかりスタートダッシュ決めようぜ。
*1: 「清水市」ではなく「静岡県」であることに注意。静岡学園・藤枝東の両校も優秀な成績を収めている以上,動画を編集する際にも清水市にだけフォーカスすることはできなかったんでしょうね。その代わり,動画内で敢えて「1982年」と特定しているのは清水東悲願の選手権初優勝の年だったからかな?
*2: 30代半ば清水出身者ワイが「ちょっと世代が上」の諸先輩方と呑むと,だいたい「あの頃は良かった,市全体として指導体制がしっかりしていたのにそれを息子可愛さにヤッヒーが全部ぶっ壊したせいで今は弱いんだ」などという話がワラワラ出てくるんだけど,ワイの周りだけ?
*3: 特に外国人監督が来た時にgdgd言う輩が増える印象(個人の感想です)
*4: このようなサッカーを,個人的には「サムライスピリッツ気合努力根性サッカー」と呼んでいる(ぇ
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