秋葉忠宏との熱く濃い3年半が,終わりを告げました。
例年,本ブログでは「1年間の振り返り」をしていますが,来年全く違うチームになるのが確実なのに今年の振り返りをすることに何の意味があるのか?と思わなくもないところですが,今年の記録を記憶として残すべく,徒然と書いていこうと思います。
1.去年までのおさらい ~秋葉流委任戦術~
今年の話をする前に,まず去年までの秋葉清水の戦い方についておさらいしましょう。
2年に渡り記事にし続けてきましたが,秋葉清水は
①超攻撃的・超アグレッシブという大枠の提示+②選手の個性を発揮しやすい場所へ配置した上での委任戦術↓「選手の質で殴る」サッカー
のチームです。
委任戦術をする上で秋葉さんが重視しているのが「立ち位置・かみ合わせ」で,試合途中からでもミラーゲームに持ち込めるように4バック⇔3バックの可変もできるようになりました。
可変システムを使いこなしながら攻めるという大枠と,個人の能力任せの「選手の質で殴る」委任戦術を組み合わせたサッカーで,最後はJ2優勝という結果を手にしました。
結果を出した上での続投ですから,今年の秋葉清水も去年同様に①大枠②委任戦術で戦うものと余裕で予想できましたので,ある意味今年の清水エスパルスの命運は
「これがJ1でも通用するのか」
の1点に絞られたと言っても過言ではありませんでした。
だって,「質で殴る」が出来なければ勝てないチームビルディングですから。
ビルドアップに興味が無いと明言する監督ですから。
2.序盤戦 ~戦術:乾・北川~
序盤戦は,完全に乾貴士と北川航也のチームでした。
守備面では,最初のプレスのスイッチはファーストディフェンダーであるこの2人に全てが任されました。
乾先生あるいはこーやのプレスの向き・方向に2列目・3列目が連動する,そういう組織が構築されました。
また,攻撃面では,乾先生・こーやがどんなボールでも一旦足元に収めてくれます。
そのおかげで,良くも悪くも「2人のうちどちらかに一旦預ければ前を向いて攻められる」という組織が構築されました。
特に,今年の秋葉さんはシーズン前から『ブレイクパス』にこだわる姿勢を見せていましたが,それは縦へのパスをしっかり収められる受け手がいることが大前提です。
その意味でも,乾・北川ペアが前でボールを収められるのはとても大きかったわけです。
加えて,ブエノもカピちゃんもパスの受け手・出口になれるので,この4人の「選手としての質の高さ」を軸に攻撃を組み立てて一気に前線までボールを持ち運べました。
そんなこんなで,清水エスパルスは「戦術:乾・北川」でかなり良いスタートダッシュを切ることができました。
他方で,序盤戦の課題になったのは「乾・北川がピッチにいない時の戦い方」でした。
守備のスイッチも,攻撃のスイッチも,どっちも乾・北川の両名に委ねる組織が構築されているだもんで,そりゃあ2人のうちどちらかがいなけりゃ同じようには戦えないわな。
だからターンオーバーした瞬間酷いチームになって攻守に決め手を欠いてしまっていた。
乾・北川の個人戦術に任された戦い方をしている以上,2人がいないなら別の戦い方をしなければならないハズ。
だけど,秋葉さんにはプランBが無く,誰が出ても同じように戦うことを求めていました。
そのことはアウェイ横浜FM戦の後の秋葉さんのインタビューからも明らかです。
でも……同じ人間は二人といないわけで……
仮に乾・北川と同じことを他の選手にもやらせるなら,乾・北川の二人がしているプレスを「言語化」してそれを他の選手に共有しないといけないわけですが,それをやった形跡はありませんでしたね。
3.中盤戦 ~委任戦術の限界と髙橋利樹の加入~
「選手の質で殴る」サッカーって,ちゃんと殴れれば強いんですよ。
でも,裏を返せば「殴れなければ弱い」ってことなんですよね。
アウェイC大阪戦とか,もう,最悪でしたね。
スタメンはベストメンバーだったし,戦術:乾・北川でスタートしたけど,チームとしての質がセレッソの方が上だったので,ボッコボコに殴られました。
その後は一旦はホーム横浜F戦で(退場者が出てくれたのもあり)勝ち点3を取れましたが,なかなか勝利を掴めませんでした。
他方で,「髙橋利樹の獲得」により図らずも守備面で脱「戦術:乾・北川」が実現されます。
最初は乾・北川のプレスを前提とする組織構造でしたので,プレスの仕方が異なるカルロスとは当初は上手く連動できず,2列目をアッサリ超えられるシーンが多かったですが,徐々にカルロスのプレスの仕方に合わせる組織,特に乾先生がファーストディフェンダーにならずカルロスに委ねる形になってから安定するようになりました。
ですが,攻撃面では得点力が明らかに落ち,複数得点が取れなくなっていきました。
これは別にカルロスが悪いとかじゃありません,シンプルに「質で殴れなくなった」だけです。
個の質で殴れないのであれば,組織で殴るしかないわけですが,秋葉さんは3年間ずっとそれに興味が無いと言い続けていますので,組織構築には期待ができません。
……どうすんねん/(^o^)\
この頃の停滞感,僕は個人的に本当に焦っていました。
残留ラインの勝ち点40にとっとと辿り着きたいのに,なかなか辿り着けない。
近づいてくる降格ライン。
もうね,気が気じゃなかったわけです。
4.終盤戦 ~残留したけどチームとしては大混迷~
個の質で殴れなければ勝てない,という停滞感がありながらも,どうにかこうにか勝ち点を積み上げていき,ホーム浦和戦のドローでどうにか残留ラインの勝ち点40を超え,ホーム東京V戦で3試合を残すという比較的余裕ある状態でJ1残留を確定させられました。
マジでホッとした…………
終盤の秋葉清水は
「5バック化して重心を後ろに置いた戦い方」
という
絶★対★残★留
の構えで戦っていました。
絶対に失点したくない,堅さ重視の戦い方ですね。
この戦い方を実現できたのは,ひとえにキム・ミンテ大先生のおかげですわ。
ミンテ大先生を後ろに控えさせてカバー役に据えて,ジェラ・蓮川の2人が相手にアタックするジェットストリームディフェンスのおかげで,まぁ守備はどうにかなっていました。
………が。
そのおかげで,
「3CBが全体的にどうにかする」
がチーム守備の大原則になってしまいました。
結果,終盤のエスパルスの守備組織は,ブロックを敷くというところから完全に崩壊していました。
だってミンテが最後尾でカバーしてどうにかする守備なんだもん,ブロック組んで組織的に守らなくてよくなるじゃん。
序盤戦は4-4ブロックあるいは5-4ブロックを組んだ守備陣形を組めていましたが,相手にジェットストリームアタックする守備をするおかげで"なんちゃって"ブロックしか存在しませんでした。
よって,ミンテがいないと守備がアッサリ崩壊します。
アウェイ川崎戦は,裏にカバー役がおらず,羽田くん含めみんなで前に出てジェットストリームアタックしまくったので,ちょっとズラされるだけでガンガン失点します。
空いた穴をどうにか埋めてくれたのが,俺たちの吉田豊だったわけで,川崎戦の途中からもそうだし,残留を決めた東京V戦も豊がどうにかこうにかバケツに空いた穴をガムテープで塞ぐかのごとくカバーしまくってくれたおかげで,まぁどうにかなりました。
……で,豊をスタメンから外したホームC大阪は試合の入りがエライことになったんですけどね(白目)
その悪い流れを止められないまま,ミンテが契約上出れないアウェイ湘南戦は負け,最終節のホーム岡山戦はミンテがいたものの「3CBがどうにかする」ことができないまま敗北しました。
「3CBがどうにかする」前提の守備って,委任戦術の極致ですので,ある意味,秋葉清水の3年間の戦い方と方向性自体は合っていたわけです。
3CBのレベルが「J1のどの攻撃陣相手でも完封できる」レベルに無かったのが悪かっただけです。
いや,そんなことを求める時点でダメでしょ(爆)
最後の3試合,マジで何も残らなかったなァ
個人戦術だけで戦うことの限界が,最悪の形で表れてしまいました。
5.秋葉清水の総括
秋葉さんは,最初から最後まで①大枠②委任戦術を崩さず,ビルドアップに最後まで興味を持ちませんでした。
一貫したその姿勢を最後まで崩さなかったことは,素直に評価できます。
方針ブレて余計なことやり出す人,たくさんいるから……(遠い目
また,エスパルスをJ1に残留させるという仕事をしっかりこなしたことは,最大級に評価されてしかるべきものです。
この功績だけで留任させるのに十二分な理由となり得ました。
本当に,心の底からのありがとう,です。
そして,秋葉さんの人間性,僕は大好きです。
秋葉さん就任後のサポーターの空気が明らかに変わりました。
これ,マジで凄い。
凄すぎて,監督交代でまた前みたいな空気に戻ってしまうのが今から怖すぎるレベル。
(サポーターが選手を扇って監督交代運動やってたかつての一部界隈,今でも大嫌い)
ですが,戦術面で秋葉さんが残したものは何だったのかなぁ,と思わざるを得ません。
最後の3試合で来季に繋がるものは,何もありませんでした。
残り試合を若手の成長の機会と割り切ることもできず,他方で「チーム戦術」ではなく「11人の個がひらめきで局面ごとに都度都度繋がる」という何かしら上積みを狙う戦い方もできず,ただ負けたという結果だけを残してしまった。
仮に,残り試合を勝敗結果度外視で全部若手中心で戦っていたなら,まぁ納得できました。
ですが,そうはならなかった。
なので,ここで道を分かつしかなかったのかもしれません。
笑顔で,恨みなくお別れできるのは,幸福なことです。
6.来季の展望 ~百年構想リーグの間にどこまで育てられるか?~
来季の監督人事は,12/6の午後6時の時点ではまだ決まっていませんが,既に「大本営発表」も出ていますので,吉田さんになる前提で来季の展望を最後に考えてみましょう。
百年構想リーグは,控えめに言ってボーナスステージです。
降格が無いので,残留に向けた戦い方を気にしなくて良くなります。
よって,即戦力中心の編成よりも,将来性ある若手中心の編成をする余裕があります。
中長期的な視点から言えば,この時間的余裕が与えられているうちに若手を育てて来季の即戦力に仕立て上げるべきです。
え?U-21リーグ?それまで待ってられるか!!!!
そして何より,毎試合勝てば賞金が出る☆
なんて最高な環境なんでしょうか!!!
チーム強化の面からしても,ここはチャリンチャリンと稼ぎまくりたいところです。
よって,吉田さんに与えられた第一のタスクは
「百年構想リーグを若手を育てながら勝ち続ける」
ことになります。
まぁムズイけど,やっていただくしかない(笑)
じゃあ,誰をどう育てるか?
吉田さんが神戸のときとやり方変えるのか分かりませんが,神戸での吉田さんのやり方は「委任戦術ベースで縦への速さを重視するサッカー」だと僕個人は見ています。
仮にこの戦い方を清水でも継続するのであれば,ボールを奪ってからポジトラ速く動けて相手DFラインに圧力かけられる縦への速さがある選手,すなわち
・西原源樹・小竹知恩・日髙華杜・土居佑至・針生涼太
辺りのスピードある若手たちに個人的には期待したいですね。
特に草津のJ3残留に貢献するという結果を出した小竹くんと,法政のキャプテンだった日髙くんには,結構期待しています。
西原くんは,もう一皮剥けて欲しいところ。秋葉さんは西原くんの育て方をちょっと間違った気がするので,吉田さんがどう育てるのか見てみたいね。
ユースの2人はユース年代では抜けてるとは思うが,まずはプロのレベルにアジャストするところからだね(土居くんにはめちゃくちゃ期待している)。
外からの補強は………どうだろうね。
とりま新外国人選手の獲得は百年構想リーグ開幕までに間に合わなくて良いと思う。
焦らなくともW杯期間中に動けば間に合うと思う。
なおブエノは絶対死守で。
頼むぞ,ソリさん。

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